第5回ロルバーン ギャラリーでは、オートマタ(西洋からくり人形)作家・原田和明さんによる「滑走路」をテーマとした、スモールエキシビジョンを開催します。
― 今回のスモールエキシビジョンのコンセプトを教えてください。
ロルバーンはドイツ語で「滑走路」。滑走路は飛行機にとって助走をして、着陸するところですが、それを自分の制作にあてはめた場合、滑走路とはアイデアを練る段階、そして作品が完成した段階となります。今回のスモールエキシビジョンは「僕の滑走路」と名付け、ロルバーンに描いたアイデアスケッチと、完成した作品の両方を展示します。
― 原田さんが作る、オートマタとはどんなものですか?(魅力を教えてください。)
オートマタとはハンドルを回すと動き出すからくり仕掛けの人形です。ちょっと笑えるようなものとか、意外性のある動きをするものを作りたいと思っています。音楽や文学が好きなので、それらがアイデアの元になることがよくあります。からくり人形とはいえ、実際には動いていない時間のほうが長いので、飾っておいても絵になるようなものを作りたいと心がけています。
― オートマタと日本のからくり人形は違うものですか?
お茶を運んだり、矢を射ったりする日本の伝統的なからくり人形は、仕組みが見えないように作られていて、人形がまるで生きているかのように見えます。僕たちが作っているオートマタは、仕組みもデザインの一部として見えるように作っています。人間や動物の動きをリアルに再現することより、作家の自己表現に重きを置いています。
― オートマタを作るようになったきっかけを教えてください。
会社勤めをしていた20代後半に、友人が勧めてくれたオートマタの本*を読んだのがきっかけです。自分でも作ってみたくなって、すぐに材料と道具を揃え、一作目は本の作例の通りに作り、次からは自分でアイデアから考えて作るようになりました。
※「動くおもちゃ」著:西田明夫(婦人生活社)
― その本のどんなところに惹かれたのですか?
直感的に「わー、いいなぁ、僕もこんなの作って部屋に飾りたい!」という感じでした。ちょうどその頃、何か趣味として打ち込めることはないかと探していた時期で、ゴルフ、スノボにギターなどいろいろ試してはどれも長続きしなかったので、まさかオートマタにはまって、仕事にしてしまうとは思ってもみなかったです。
― アイデアや図面をどのように書き留めていますか?
アイデアは何か単純な作業しているときとか、寝る前とかにふと浮かぶことが多いので、常にノートは手元に置いて、思いついたことをスケッチするようにしています。自分が分かればいいやという感じで、時間をかけずにささっと描きます。図面に関しては、かなり大雑把に描いて、後は作りながら試行錯誤しています。
― 図面を見ながら手作業ですべて制作するのですか?
帯ノコや自動カンナなどで製材して板を作り、それを図面に合わせて糸ノコでカットして、ボール盤で穴を開け、ナイフで彫り、サンドペーパーをかけるというのが通常の制作の流れです。着彩については妻のめぐみが担当しています。
― 制作過程で一番楽しいポイントと、難しいポイントを教えてください。
一番楽しいのは、アイデアを考えてから、試作をして大体動くことが確認できるまでの試行錯誤している段階。これは僕にとっては遊びみたいなものです。難しいポイントは、イメージ通りの動きに近づけるために、仕組みを微調整していく段階。こちらは正直、苦行です。
― ロルバーンを使っていただいていますが、使い勝手はいかがですか?
見た目と、上質なのにカジュアルに使えるところが気に入っています。いつも使うものだし、たまに人に見せることもあるので、ノートを選ぶときに見た目は重要です。とはいえ、あまりに高級なノートだと、「綺麗に使わなくては」とか「上手く描かなくては」とつい構えてしまって使いにくいです。ロルバーンは、その点のバランスが絶妙で、お気に入りの普段着といった感じです。それと方眼の色の薄さが、自由に描きたいときは気にならないし、左右対称に描きたいときは便利で良いですね。
― 作品を購入できるところはありますか?また、今後の活動のご予定を教えてください。
作品を常時取り扱ってくださっているお店には、有馬玩具博物館のミュージアムショップ「ALIMALI」「TOYTOYTOY」(香川県)、倉敷意匠アチブランチ(岡山県)があります。昨年、念願叶って僕のオートマタ作品集「話せば短くなる」が出版されたので今後は僕の本を取り扱ってくださっている全国のお店で個展を開催して、作品と本の紹介ができたらいいなと思っています。これからもみなさまの肩の力が抜けるようなオートマタを作っていきたいです。
プロフィール
原田和明
1974年 山口県生まれ。2002年よりオートマタ制作を始める。2006年よりファルマス大学大学院で現代工芸コースを専攻すると同時に、オートマタ制作の第一人者マット・スミス氏の工房でも研鑽を積む。2008年に山口県山口市に工房『二象舎』を設立、オートマタ制作やオートマタコレクション展の企画、ワークショップなどを行っている。
開催日 2020/3/25(水)〜4/27(月)
場所 デルフォニックス 渋谷
東京都渋谷区宇田川町15番1号 渋谷パルコ4F
問合せ デルフォニックス 渋谷(03-6809-0721)
営業時間 11:00-21:00 ※(最終日は17:00まで )
※新型コロナウイルス影響により、
営業時間については変更になる場合がございます。
予めご了承ください。
デルフォニックス 渋谷に内設する「ロルバーン ショップ&ギャラリー」と、ロルバーンとの新しい出会いを提供する「ロルバーンエキスポ」の特設サイトが連動。店頭では、さまざまな文化を切り取ったスモールエキシビションを。特設サイトでは、展示内容を小さな記事にしてアーカイブしていきます。
2020.3.19