Q. Present & Correctのはじまりは「自分が行きたいと思える場所を作りたい」というNealさんの思いだと聞き、今回のインタビューをオファーしました。幼少期から文具が好きだったそうですが、記憶に残っているエピソードがあれば教えてください。
誕生日やクリスマスには、いつも文具や工作の材料をもらっていました。旅行先ではお小遣いをはたいて消しゴムやノートセットを買うような子どもでしたね。集めるだけでなく、ちゃんと使っていました。絵を描いたり、学校の課題に使ったり。スクラップブッキングも大好きで、訪れた場所で集めたものをなんでも貼り込んでいました。最近、母がそのスクラップブックを見つけてくれたんです。砂糖の袋、ポストカード、レシート、ナプキン……そんなものがぎっしりと。
子供の頃に特に気に入っていたのは、おもちゃの郵便局セットです。伝票や消しゴムのスタンプ、小さな秤がついていました。それから、1989年のクリスマスにもらった50色の色鉛筆セット。あれは本当に、宝物でした。
Q. その後、グラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートされたそうですね。志したきっかけと、当時の経験についても聞かせてください。
11歳ごろには、グラフィックデザイナーになると決めていました。図書館でデザインの専門書を借りてきては、夢中になって読んでいました。大人向けの難しい本ばかりでしたが、それでも。その思いを持ち続けてアートカレッジへ進みました。
デザインスタジオ・Winkreativeで働く日々はとにかく充実していました。若いうちから大きな責任を任されて、毎日がとても忙しかったけれど、素晴らしい人たちに出会えました。2004年には上司と一緒に初めて東京を訪れ、文具ブランド「Craft Design Technology」のブランディングも担当しました。ブランドの作り方、小売りの面白さ、ものの見方——あの時代に培ったものが、今のPresent & Correctの根っこにあると思います。モダニズムへの敬意、新しさと古さが共存するようなデザインへの愛着。そういった美意識は、Winkreativeで育んでもらいました。
Q. スタジオで働く傍らで、ご自身でノートをデザインして販売し始めたのがPresent & Correctの始まりだと伺いました。
昼間はスタジオで仕事をして、帰宅後はノートや封筒、バッジを作って、ロンドン各地のショップやときどき出店するマーケットで販売していました。Present & Correctの始まりは、本当にゆっくりとしたものでした。おそるおそる世に出しながら、反応を確かめる日々。それと同時に、一日中パソコンに向かった後で、手を動かしてアナログなものづくりをする時間がたまらなく好きでした。
Q. 2009年のオンラインショップから始まり、現在のブルームズベリーの店舗へ。「自分が行きたいと思える場所を作りたい」という思いは、どのように反映されていますか?
「文具のキャンディショップ」のような空間にしたいと思っていました。見るものがたくさんあって、でも常に整然と美しく並んでいる。温かくて、楽しくて、私たちの好きを全部詰め込んだような場所。20ペンスのものもあれば、200ポンドのものもある。でも、すべて私自身が選んだもの——心から気に入ったものだけです。建築家が設計したシンプルなグリッドシステム、メープル材とニュートラルな棚。余計なものを削ぎ落として、文具そのものの魅力を際立てるための空間です。さまざまなアイテムを1つにまとめながら、それぞれをきちんと輝かせてくれる、そういう場所になっていると思います。
Q. 今では18ヵ 国以上のプロダクトがお店に並び、コレクターや仕入れ先のネットワークも世界中に広がっています。そのつながりはどのようにして育てましたか?
とても自然な形で広がってきました。フリーマーケットで出会った人、お客さまが紹介してくれた人、インターネットを通じて知り合った人……最近では、自宅や地元で見つけたものを売りたいと連絡をくれる方も増えています。
お店には常にさまざまな国のものを並べるようにしていて、小さな切手から、デスクオーガナイザーやノートまで多岐にわたります。
フリーマーケットを巡り、各国を旅することは、この仕事で最も好きな時間のひとつです。行くたびに必ず新しい発見がある。今年2月はメキシコシティへ行き、当時のデッドストックのノートやステンシルをたくさん持ち帰りました。ドイツでは1940〜60年代の文具を持つ古い知り合いにも会いに行きます。こういったつながりも、旅から生まれる出会いも、私にとってかけがえのない財産です。
Q. 日本の文具やヴィンテージのペーパーアイテムも多数取り扱っていますね。
日本には素晴らしいデザインの歴史と、独自のスタイルがあります。特にパッケージデザインへのこだわりには、深く共鳴するものがあります——私はパッケージが大好きなので。古いものが丁寧に大切にされていて、何十年も前のものでも驚くほど状態がいい。アイスクリームの包み紙からラベル、ノート、消しゴム、鉛筆まで、なんでも欲しくなってしまいます。昨年東京を訪れたときも、当時のデッドストックのアイテムや古い紙ものをたくさん見つけて、本当に楽しかったです。
Q. ロルバーンについてはどのような印象をお持ちですか?
私たちもお客さまもロルバーンが大好きです。
クラシックなたたずまい、美しい質感と色合いの紙、シンプルなのに表紙のカラーバリエーションが豊か——そういうところが特に好きです。新しいロルバーン メモ ミクロも、最高に楽しいですよね。
Q. ありがとうございます。デルフォニックスのバイヤーも過去に訪れた際に「こんなにも素敵なお店があるのか」と感動したと話していました。(デルフォニックスが旅先で見つけた海外文具エピソード)
そう言っていただけるのは、本当に嬉しいです。Present & Correctのことを、わかってもらえたような気持ちになります。Winkreativeで働いていた頃にデルフォニックスと出会い、長年にわたって取り扱いを続けられていることを、心から誇りに思っています。
Q. 近年、世界ではジャーナリングブームが起きていますね。日本でも日記や日々の記録をする人がとても増えたと感じています。Present & Correctを運営する中で、そういった時代の変化を感じることはありますか?
はっきりと感じています。今最も気になっているのは「ジャンクジャーナリング」というトレンド。実は私が子供の頃にやっていたことそのものなんです。日常の中で集めた紙ものや小さな印刷物をノートに貼り込んで、どこへ行き、何を集めたかを記録していく。お店にも、ヴィンテージのフラッシュカードや切手を求めてやってくるお客さまがたくさんいます。そういった文化がまた盛り上がってきているのを、嬉しく感じています。
Q. ご自身も日頃からノートに書き留めることを大切にしているそうですが、紙に書くという行為は、Nealさんにとってどのような意味を持ちますか?
実用的な意味でも、スマートフォンやタブレットへの入力よりずっと効果的だと感じています。紙のリストが好きで、ページをめくって新しいことを書き出したり、以前のメモに立ち返ったりできる。視覚的で、すぐに確認できる。書いたことに線を引いて消したり、書き直したりする、そのひとつひとつの動作にも、独特の充実感があります。手で書くと記憶に残りやすい、とも思っています。考えを深めていく上でも、助けになるし、デジタルの入力とは違って、手書きの言葉はなぜだか頭の中にしっかりと根付く気がするんです。
Q. 最後に、Present & Correctを通じてこれから届けていきたいことや、挑戦したいことがあれば聞かせてください。
小さなお店を続けていくこと自体、すでにたくさんの挑戦の連続です。だからこそ一番大切にしたいのは、「楽しみ続けること」。私が心から楽しんでいれば、お客さまにもその気持ちは伝わると信じています。毎日に小さな喜びをくれる、見た目も美しくて、使い勝手の良いもの——今という時代に、そんなものを届け続けていけたら嬉しいです。
今進行中のプロジェクトもあります。神保町で見つけた20世紀初頭の日本の観光地図をまとめた本や、もうすぐ始まる新しい本のプロジェクト、ノートをはじめとする新しいプロダクトも。作りたいもの、やりたいことのリストは、いつだって尽きません!
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お小遣いで買った消しゴムや、お気に入りを集めたスクラップ。幼い頃に芽生えた「好き」は積み重なり店舗となり、やがて世界中のコミュニティへと広がっていった—— Present & Correctは今も、Nealさんの「作りたいもの、やりたいことのリストは、いつだって尽きない」という言葉通り、少しずつ形を変えながら続いています。
自分の中にある感覚を、あらためて信じてみる。その積み重ねは簡単ではないけれど、たしかに、ものごとを進める力になるのだと思います。Present & Correctの店のあり方やNealさんに共感したお客様に、ロルバーンが長く選ばれていること。
その事実を、嬉しく受け止めています。
Neal Whittington (ニール・ウィッティントン)
ステーショナリーショップ Present & Correct 創業者。
リーズ芸術大学卒業後、グラフィックデザイナーとしてロンドンのデザインスタジオを経て、2003年にWinkreativeへ。航空会社、ホスピタリティ企業、文具ブランドのブランディングを担当。2008年より自身のプロジェクトとしてPresent & Correctをスタートし、翌2009年に独立してオンラインショップを本格始動。2023年よりロンドン・ブルームズベリーの現店舗にて営業中。新旧の文具を世界18カ国以上からセレクトし、世界中にファンを持つ。